論文寄稿:田原真人

自己組織化する集団のトーラス型ホロン構造モデルの構築

論文寄稿:田原真人が『統合的アプローチ研究』創刊号 2020年3月1日発行に寄稿

https://integrated-approach.jimdofree.com/

1.集団の自己組織化とは?  

自己組織化(self-organization)とは、「ひとりでに秩序が形成される現象」を表す言葉 である。もともとは物質科学に用いられていたが、その後、生命現象や組織論などへも拡張 されるようになった。後述するように、生命現象を含む自己組織化は明確に定義するのが困 難な要素を含んでおり、分野横断的に通用する定義は、今のところ存在していない。 

本稿では、組織、コミュニティ、チームなどの人間の集団活動に生じる自己組織化の2つ のモード、協同現象モードと創発モードについて論じ、創発モードの自己組織化が起こりや すい集団の条件について検討する。また、創発モードの自己組織化の結果として出現するホ ロン構造をトーラス図形を使って可視化することを試みる。 

2.協同現象と創発  

自己組織化には、協同現象と創発という2つのモードが存在する。ここでは、この2つのモ ードの違いについて説明する。 

物理学者のH・ハーケン(1983)は、レーザー発振において多数の要素が相互作用するとき に生じる現象を一般化し、自己組織化の原理の1つとしてシナジェティクスを提唱した。ハ ーケンは、レーザーの誘導放射において、はじめは複雑な振る舞いをしていても、より時間 スケールの長いレベルの現象が支配的になり、少数の自由度が生き残って単純な振る舞いに 

なっていくことを明らかにし、これを隷属化原理(enslaving principle)と呼んだ。 またイリヤ・プリゴジン(1977)は、平衡から遠く離れた系における熱力学を研究し、非平 衡開放系においてエントロピーが自発的に減少する、つまり、自発的に秩序が形成されるこ とを理論的に示し、散逸構造と名づけた。 

ハーケンやプリゴジンが取り組んだ物理化学系の自己組織化は、外的条件を整えれば、条 件に応じた自己組織化現象が再現可能な形で生じ、それを理論的に説明することが可能であ る。本稿では、そのようなモードを、自己組織化の協同現象モードと呼ぶことにする。 

では、次に自己組織化のもう一つのモードについて考えてみよう。生命現象は、単純なも のから複雑なものへと進化を遂げ、ひとりでに見事な身体の組織や生態系を作り上げている 

続きは、『統合的アプローチ研究』創刊号にて

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